2014年1月28日火曜日

アルコール依存症の親を持つ成人した子供たちは同じ苦しみを味わっているのですか?


「アルコール依存症の親を持つ成人した子供たちは同じ苦しみを味わっているのか?」



よく訊かれる質問です。

自分はひどくおどおどしている。自分でもいやで自分が嫌いになる。
自分はひどく変わっている気がする。
自信を持って話せない、行動できない。・・・・・

同じ現象に苦しんでいる人はたくさんいます。
しかし、現象は共通したものではなく様々です。

その一方で、アルコール依存症者の親のもとで育ったこどもの体験を話すと、「自分のことのように聞こえます」と言います。
特に人間関係では、似たような悩みのご相談を数多く受けます。

そしてその苦しみに共感します。ほとんどの人が心理的に共通した体験を持っていて、同じような不安と恐れを持っています。


だからと言って同じ体験をしているわけではありません。

不思議な感じがしますが、それには、いくつかの理由があります。


・親のアルコール依存症が発症したときのこどもの年齢が違う
・両親ともアルコール依存症なのか、片親だけか?
・片親だけの場合、父親か、母親のどちらがアルコール依存症者なのか
・家族の子供の人数と誕生した順番
・配偶者自身(共アルコール依存症)の回復のための努力の度合い
・身近にサポートする人がいるか
・身体的な虐待があるか
・性的虐待があるか
・家族の社会的な地位
・家族の経済力


同じ家族であっても、すべての子供が同じように影響を受けるわけではないので、その反応はバラバラです。

例えば、ある子供はアルコール依存症の状態をはっきりと見て身体的な虐待を体験しているかもしれません。しかし他の子は体験が乏しく記憶にないかも知れません。
すると同じ兄弟でも親のイメージが違うことが起こってきます。

同じことは親にも言えます。親の立場になれば、同じように育てたと思い込んでいますが、しかしそんなことはないのです。よく対面でセラピーをすると「同じように育てた」と機嫌を悪くされるお母さんがいますが、そんなことはありません。


子供たちは状況に適応するために、それぞれに子供独自の方法を見つけ出しているのは珍しいことではありません。兄弟でもある子だけが特別に強い反応を示していることもあります。


しかし個々に違いがある一方で、アルコール依存症の親を持つ成人した子供たちは全体に共通して、情緒障害を起こし、自己否定感が強く不信感を持っています。

情緒障害とは、情緒の現れ方が偏っていたり、その起伏を自分の意志でコントロールできない状態が継続してしまうため、団体生活(学校や社会)の支障をきたす状態を言います。